方舟船TamerlaineのエンジニアであるTorranceは、物資を盗み、ブラックマーケットで売りさばいていた。そこに意外な人物が調査に現れる。
継承
「じきにリフトが完成するわ」苦しそうにEdithは言った。「週末までには」彼女は娘がハシゴから降りるのを手助けしようとした。しかしLinaは、自分自身も息を切らせながらその手を払いのけ、母の好意は両者の間に横たわる深い溝に消えていった。母にかまわず、壁にもたれかかって吸入器から薬を吸うLina。一息つくと、彼女はガントリーの上に立ち、端からおそるおそる船腹を見下ろした。まるでクジラの死骸に入り込んだちっぽけなシーモンキーのようだ。上部構造の骨組みがまだところどころ剥き出しになっている。アーク灯のギラギラした青白い光が、Northern Bulletの骨組みをつなぎ、密封する作業に従事している100人のエンジニアと50匹のアウェイクン、500体のロボットを照らし出していた。方舟船。その一隻。現在、67隻の方舟船が建造されつつあった。地球で、衛星軌道で、水上の浮遊型造船所で、そして月と火星で。資材と人材と貴重な専門知識をかき集められる場所ならどこでもだ。
Northern Bullet。Edithの娘。少なくともこの娘は彼女を嫌っても恨んでもいない。ガントリーの端で体を揺らしているLinaと視線が合った。「気をつけて-」「うん、わかってる。いつ手すりをつけるつもりだったの?」
